歯科医師31人が「国民皆歯科健診制度」についてホンネで答える!

2022年6月に国の方針として示された「国民皆歯科健診制度」。この制度は、国民全員が歯科健診を受けられるようにする制度です。大人になると歯医者さんで歯科健診(検診)を受ける機会が減りがちなので、歯やお口(口腔内環境)の健康のことを考えたら期待の持てる制度だと言えるかもしれませんね。

そこで今回は、この国民皆歯科健診制度について歯科健診を行う側である歯科医師にアンケートを実施しました。歯科医師のホンネから、この制度について考えていきたいと思います!

「国民皆歯科健診制度について歯科医師向け意識調査」 調査概要
調査期間:2022年09月12日~2022年10月31日
調査方法:歯科タウンに掲載している歯科医師へアンケート
有効回答:31サンプル
対象地域:全国
調査対象:歯科医師(男女)

8割近くの歯科医師がこの制度を評価している!

質問1.「国民皆歯科健診制度について良いと思いますか?」

国民皆歯科健診制度について良いと思いますか?

国民皆歯科健診制度について、「非常に良いと思う」・「良いと思う」の回答を合わせると77%にも及ぶ結果になりました。大多数の歯科医師が、好意的に受け止めていることが分かりますね。

その反面、16% は「あまり良いとは思わない」・「全く良いと思わない」と回答する結果に。「どちらともいえない」と回答したのは7%でした。


「オーラルケアの重要性が訴求できる」「意識変革に期待」など、肯定的な意見が多数

質問2.「国民皆歯科健診制度について率直にどう思いましたか?」※複数回答可

国民皆歯科健診制度について率直にどう思いましたか?

この質問では、複数の質問項目を選択していただくことで歯科医師のホンネに迫ってみました。まずは、「オーラルケアの重要性を訴求するとてもいい機会だと思う」と答えた歯科医師は48.4%。半数近くが、この制度とオーラルケアの重要性を結び付けて評価していますね。また、同率48.4%で回答が多かったのが「国の制度となれば日本人の意識変革が期待できる」。これも、国民皆歯科健診制度がスタートすることで、日本人の歯やお口の健康向上につながると期待する答えでした。

ただ、肯定的な意見ばかりではありません。少数ではありますが、「制度ができたところであまり意識変化や行動変容はしないと思う(32.3%)」「制度自体はいいが予約枠が逼迫するのは困る(22.6%)」「保険(診療)が増えるので経営視点では多少懸念がある(6.5%)」と続きました。

たしかに、歯科医師からしたら予約枠が逼迫したり保険診療ばかりが増えたりするのも、困った話かもしれませんね。

また、「その他(12.8%)」の意見として下記がありました。

・保険でするのではなく自費ですべきことだと思う。
・施策の内容としてまだ何も決定しておらず、先日の参議院選の際の票取りとしかなっていない
・打ち上げただけで実現性は乏しいだろうと思う。
・ただ税金を使わず、自分で健康にお金をかける文化をつくるべき。


「歯科健診による健康改善が医療費削減につながる」など税金が使われることに肯定的

質問3.「今回の国民皆歯科健診制度に税金が使われる点についてどう思いますか?」

今回の国民皆歯科健診制度に税金が使われる点についてどう思いますか?

この質問では、この制度に税金が使われることへの意見を聞きました。「非常に良いと思う」・「良いと思う」を合計すると約61%。おおむね、税金が使われることへ肯定的であることが分かります。

肯定的な意見の中から、「非常に良いと思う」の具体的な意見を以下でピックアップしてみます。

・歯周病など全身疾患との関わりを指摘されているにも関わらず、医科の特定健診のようなものについて自治体ではプアーな状態。行政における歯科の権限はあまりにも弱く、口腔崩壊をしている、言ってみれば歯科難民である地域住民の口腔内にアプローチする機会があまりにも少ない。健康寿命を伸ばすには歯科検診、予防が不可欠である。また特に在宅患者は手厚い公的な手助けがあって然るべき。通院できる患者ばかりではない。
・日本の医療費を抑えるための税金投入は仕方がない。
・歯科健診の励行による健康改善が、おそらく医療費削減にはつながるから。

「あまり良く思わない」・「全く良いと思わない」の合計は約16%で、少数でした。「どちらとも言えない」が22.6%で、意外と多いかもしれませんね。

否定的な意見の中から、「全く良いと思わない」の具体的な意見を以下でピックアップしてみます。

・ただでさえ社会保障費が膨れ上がっているのに何故今国民皆保険を税金で行うのか疑問である。おそらく自民党の選挙のためだと思う。日本人は世界でも有数の口腔衛生意識が低い国民である、この国民皆保険を行っても意識改革にはならないと思うし、意識が高い人は既にやっている。自由診療でやって欲しい。
・既にある財源から分けていこうとしないのか、このための増税があったら本末転倒。


「もっと積極的な情報発信が必要」と感じている歯科医師が多い

質問4.「ユーザーアンケートでは35%の人が全身疾患予防の為にオーラルケアが大切ということを知りません。この数値についてどう思いますか?」※複数回答可

ユーザーアンケートでは35%の人が全身疾患予防の為にオーラルケアが大切ということを知りません。この数値についてどう思いますか?

以前、歯科タウンを利用して歯医者さんを予約した一般の患者さんに「全身疾患予防とオーラルケアの大切さ」に関するアンケートを行ったことがあります。その結果は、35%もの方が「全身疾患予防の為にオーラルケアが大切ということを知らない」という結果でした。

このアンケート結果に対するご意見も伺ってみたところ、「国や歯科医師会などからももっと訴求/啓発してほしい(58.1%)」「TVや新聞、インターネットなどのメディアからももっと訴求/啓発してほしい(51.6%)」と、もっと積極的な情報発信が必要であるとの意見が多くありました。

この点は、まだまだ情報発信が必要ですね!


「血糖値が改善」「認知機能・運動機能の改善」など身体の調子が改善された例が報告

質問5.「自院で口腔内環境が改善された事により、他の病気が治った、身体の調子が良くなったなどの事例はありますでしょうか。」

これは気になる質問ですね。お口の中の環境(口腔内環境)が改善されることで身体の調子が良くなるのならば、歯科健診を受けることに意欲的になれますからね。それでは、結果を見ていきましょう。

自院で口腔内環境が改善された事により、他の病気が治った、身体の調子が良くなったなどの事例はありますでしょうか。

「よくある」が32.3%。「稀にある」が45.2%という結果でした。結構多い数字かもしれませんね! 具体的にどんな改善があったのかをご紹介します。

・糖尿病のHbA1c(血糖値)が改善された(※10件以上)
・糖尿病HbA1cが改善し、モチベーションが上がり、快方もしくは良好な状態が維持される。しかしこれらはあくまで地域の内科と連携した上である。
・原因不明の皮膚炎が治った、肩こり頭痛が緩和された
・顎関節や虫歯で肩こり、片疼痛、腰痛、胃腸炎など
・咬合改善により健康維持増、胃腸などの治癒
・咬合の改善により、老人のフレイルが改善した
・認知機能、運動機能の改善
・補綴により血色がよくなり体重が増えた
・抜髄してもらったら、足の付け根の隆起が治った
・骨隆起除去によって体調改善、咬合再構築により歩行の安定


「歯科健診に力を入れている歯科医院選び」のポイントは?

質問6.「歯科健診に力を入れている・得意としている医院の特徴はありますか? どのような点を見て判断すればいいでしょうか。」

この質問項目では、歯科健診に力を入れている・得意としている歯科医院にはどのような特徴があるのか、そしてどのような点を見て判断すればいいのかについて、自由回答でお答えいただきました。

・治療終了時に健診の重要性を説明。
・口腔内細菌検査によるリスク検査、自費クリーニング。
・健診後の情報発信のパンフレットなどが充実している。
・医院全体のスタッフで歯周治療に取り組んでいる熱意が感じられるか。最低でも拡大鏡やマイクロスコープを使って歯周治療を行っているか。口腔内細菌検査はただの宣伝でしかない。細菌数を見ても歯周病菌は減らない。
・歯科健診に特徴は無いが、口腔ケアにおいて歯石だけ取るのではなく、歯周病の原因のバイオフィルムを除去する特別なアイテムの用意がある。
・精密検査、SRP(スケーリング&ルートプレーニング)、FOP(フラップ手術)、TBL
・こまめに染色して、プラークスコアを測定する。

歯科健診に力をいれている・得意としている歯科医院には、いくつかの特徴があることが分かりました。まず、検査面では「口腔内細菌検査」や「口腔機能検査」など精密検査を行っている歯科医院があります。また、治療面では「歯周病治療に注力」、「マイクロスコープを使用した治療」、「自費クリーニング」などを実施している歯科医院がありました。

他にも、「丁寧な説明や個別指導」、「継続的な管理」を行っているかも、歯科健診に力をいれている歯科医院選びでの重要なポイントとなりそうです。


「歯石の付着状況や歯周ポケットの有無など」が96.8%と大多数

質問7.「自院で健診を行う際どこを重点項目として診られていますか?」※複数回答可

この質問では、自院で歯科健診を行う際に重点的に診ている項目を複数回答でお答えいただきました。歯科医院ごとに特徴がありそうですが、上位3つの回答をご紹介します。

自院で健診を行う際どこを重点項目として診られていますか?

「歯石の付着状況や歯周ポケットの有無など」が96.8%で1位でした。ほとんどの歯科医師が重点項目として診ていますね。2位は「歯の本数や歯肉の状態を検査」で93.5%、3位が「むし歯やかみ合わせのチェック」で90.3%となりました。

だいたい重点的に診る項目は似通ってくるんですね。その他にも、「顎関節、粘膜の異常などのチェック」・「生活習慣や食生活など」も約65%ありました。


約45%が「制度の導入で通院頻度があがる」と回答

質問8.「国民皆歯科健診制度が実施されたら、患者さんの意識が変わり、歯科医院への通院頻度があがると思いますか?」

いよいよ最後の質問です。制度が導入されることで、患者さんの意識が変わり、歯科医院へ通う頻度があがるのでしょうか?

国民皆歯科健診制度が実施されたら、患者さんの意識が変わり、歯科医院への通院頻度があがると思いますか

「あがると思う」との回答が約45%で最も多い結果となりました。半数近くの歯科医師が、あがると思うと考えているようですね。「あがると思う」と回答した中から、具体的な回答内容を以下で抜粋します。

・悪い所を治したい人がいると思うから。
・歯科医院による啓蒙活動は少なくともあることと、口腔ケアの体験により口腔内の爽快感を体感するため。
・国家規模としてメディアに常時載せればあがる!
・国が行う事だから。
・無料の健診を実施している自治体と、たとえ少額でも有料の健診を実施している自治体とでは、受診率に大きな差がある。

反対に、「あがらないと思う」と回答したのは約10%。結構少数かもしれませんね。こちらも、具体的な回答内容を以下で抜粋します。

・歯は「治るもの」(実際は治らない、修復処置)だと思っているので、症状が出てから行けばいいと思っている人が多い。
・緊急性や必要性、義務ではないから。
・各自の意識の持ち方なので、保険にしても来ない人は来ない。

意外と多かったのが、「どちらともいえない」と約39%が回答しています。推測ですが、歯科医師としてもまだ制度の導入による変化が予測できないのかもしれませんね。


まとめ

ここまで、歯科医師のアンケート結果をご覧になっていかがでしたか? この国民皆歯科健診制度について多くの歯科医師が肯定的に考えていて、私たち国民にもポジティブな影響があると考えていることがお分かりいただけたかと思います。

この制度は、まだ国として大枠の方針が示されたばかりで、具体的な内容はこれから決まってくると思います。でも、歯やお口の健康について意識が高まることは良いことのはず。

この制度をきっかけにして、健康な歯やお口を目指しましょう!