みんなの歯とお口の健康を守る「国民皆歯科健診制度」には、どんな目的があるの?

国民全員が定期的に歯科健診を受けることを目的とした「国民皆歯科健診制度」ですが、2022年6月の「骨太の方針」に盛り込まれ、制度の成立に向けて着々と動き出しているようです。ちなみに、「骨太の方針」とは経済政策の基本運営方針のことを意味します。

年代に関係なく歯科健診を受けられるようにするこの制度ですが、そもそもどんな目的があるのでしょうか? どうやら、この制度には2つの目的があるようです。


国民皆歯科健診制度の目的① 「歯とお口、そして全身の健康を守るため」

国民皆歯科健診制度の目的① 「歯とお口、そして全身の健康を守るため」

皆さんは、「歯周病」という病気を聞いたことがあるでしょうか? 歯周病にかかると歯周病菌が血管に入りこみ、血糖値をコントロールするインスリンの働きが衰えていきます。最悪の場合、糖尿病が悪化してしまう可能性があります。

他にも糖尿病だけでなく、脳卒中・心筋梗塞(しんきんこうそく)・認知症・骨粗鬆症(こつそしょうしょう)・高血圧症・妊娠合併症など、あらゆる病気に関わってくると言われています。

この歯周病は、決して他人事ではない病気です。なんと、35歳以上の人の8割がかかっている病気であり、「国民病」と言われるほどです。歯周病に、こんなに多くの人がかかっているなんてビックリですよね!

また、虫歯などで歯を失ってしまうと、咬む機能が低下してしまいます。その結果、太りやすくなったり認知症になる可能性が高くなることもあるそうです。

病気から身体を守り、いつまでも元気でいるためには、歯とお口の健康を守ることが欠かせません。そのためにも、国民皆歯科健診制度を利用して、定期的に歯科健診を受けることが大切だと言えるでしょう。


国民皆歯科健診制度の目的② 「莫大な医療費を抑制するため」

国民皆歯科健診制度の目的② 「莫大な医療費を抑制するため」

国民皆歯科健診制度のもう一つの目的、それは医療費を抑制するためです。日本の医療費は、年間42.2兆円もかかっています(2020年度)。コロナ禍による受診控えの影響でやや減少したものの、それでも莫大な金額ですよね。

国としては、この莫大な医療費を少しでも抑えたいはずです。また、この医療費の半分近くは私たちが納めた保険料(健康保険料)で賄われていますが、残りの半分は税金があてられています。

そのためにも、歯とお口の健康を守ることがポイントになります。先ほどの歯周病の例のように、歯とお口の健康を守ることが全身の健康につながります。つまり、医療費削減の効果が期待できるはず。この制度で国民全員が定期的に歯科健診を受けて歯とお口が健康になれば、それだけ病気になるリスクが下げられますからね。


この制度といまある健診制度との違いって?

この制度といまある健診制度との違いって?

ここまで、国民皆歯科健診制度の目的をご紹介してきました。国民全員が定期的に歯科健診を受けることにはメリットがありそうですが、いまある健診制度との違いはどこにあるのでしょうか?

いまある健診制度は、以下の通り3つの区分で行われています。

・1歳6ヶ月健診・3歳児健診(母子保健法による)
・学校歯科健康診断(学校保健安全法による。高校生までが対象)
・40~70歳の歯周疾患健診(健康増進法による。全国の約7割の自治体が実施)
※歯に有害な化学物質のガスを業務で使用する人も歯科健診の対象

ご覧の通り、いまある健診制度では10代後半の大学生やその他の学生、20代・30代の方がカバーされていません。また、健康増進法による40~70歳の歯周疾患健診は、全国の約7割の自治体が実施しているものの、実際の受診率は1割にも満たないそうです。

これでは、すべての国民の歯やお口の健康を守れているとは言えませんよね。すべての国民をしっかりとカバーするのが、国民皆歯科健診制度の一番の特長だと言えるでしょう。

いくつもの目的がある国民皆歯科健診制度ですが、誰もがいつまでも元気でいられるように、この制度をフル活用していきたいですね!