川村歯科医院

ものを噛むときに、何となく顎に違和感がありませんか? もしかするとそれは咬み合わせが悪化しているのかもしれません。今回は東京都杉並区荻窪の「川村歯科医院」院長・川村裕先生にインタビューを実施。咬み合わせの悪化が原因のひとつとされる顎関節症の治療もおこなう川村先生に、咬み合わせの悪化が招くさまざまな弊害や、咬み合わせの悪化の要因となる日々の習慣についてお話を伺いました。


咬み合わせの悪化を放置することで生じる弊害

意外な「些細な癖」で起こる咬み合わせの悪化

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──顎の関節や周辺に痛みや違和感が出る顎関節症 ですが、その原因のひとつに咬み合わせの異常があると聞きます。そもそも咬み合わせはなぜ悪化するのでしょうか。自分で気をつけることはできるのでしょうか。

咬み合わせが悪化する原因のひとつに、日頃の習慣によって歯が押されてズレてしまうことがあります。実は歯は簡単に動いてしまうのです。おそらく皆さんの想像以上でしょう。例えば頬杖をついたり、片側を下にして寝たりする癖があると、歯がズレる原因になります。

──私も頬杖をつく癖があります。気をつけないといけないですね……。眠るときに「横向きのほうが落ち着く」という方も多いような気がします。これも咬み合わせに影響を及ぼすとは、ちょっと驚きです。

私が患者さんにおすすめしているのは、大の字になって上向きで寝る方法です。ずっと横向きの姿勢で寝ていると、顔の重みが歯にかかってしまう。顔の重さって、実は5キロもあるんですよ。それが一晩中続くわけですから、徐々に歯がズレ、咬み合わせにも影響を及ぼしてしまいます。
ただ、いきなり寝る姿勢を変えようとしても難しいと思います。ですからまずは噛み癖からアプローチしてみましょう。噛み癖と寝る姿勢の癖は一致していることが多いんです。
噛み癖を矯正する方法のひとつには、普段噛んでいる側の反対側でガムを噛む練習があります。この方法で慣れたら、仰向け寝にステップアップしてみましょう。

──ガムで噛み癖を矯正する方法があるのですね。頬杖や寝る姿勢の他に、咬み合わせに影響を及ぼしてしまう習慣はありますか?

舌の位置ですね。舌の正しい位置は上顎についている状態なのですが、意識しないと下の歯に当ててしまっている方が多いんです。舌のポジションが正しくないと、歯が舌に押され、咬み合わせに悪影響を及ぼします。普段から舌を上顎につけることを意識してほしいですね。

顔の歪みも咬み合わせの悪化が原因かも……

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──咬み合わせの悪化が招くものには、顎関節症以外に何かありますか?

顔の歪みにつながることがあります。うまく咬み合わせられないと、片側だけでものを噛むようになってしまいます。そうなると、よく噛むほうの頬が引き締まり、反対側はだらりと伸びたような状態になることも。頬だけでなく口角や目の高さにも影響を及ぼし、顔の左右の印象が変わり全体的に歪んだように見える原因になります。

──顔の見た目にまで……。私も証明写真などを撮ったときに顔の歪みが気になることがあります。片側でものを噛む癖があるので、これから気をつけたいです。ちなみに、慢性的な食いしばりや歯ぎしりも咬み合わせの悪化に関係すると聞いたことがありますが、実際どうなのでしょうか?

食いしばりや歯ぎしりは癖である可能性が高いですね。先ほど咬み合わせに影響を及ぼすものに舌のポジションがあるとお話ししましたが、食いしばりも舌が下の歯に当たっていると起こりやすいです。
試しに舌を上顎につけた状態で食いしばろうとしてみてください。やりにくくないですか?

──確かにそうですね!

ですから、食いしばりを防ぐためには舌を正しい位置に置く意識をするのが重要。しかし、やはり意識していないと徐々に舌が下がってしまう方が多いのです。そうなると食いしばりが癖になり、それが顎関節症・頭痛・肩こりの原因になることもあります。

──食いしばりが頭痛や肩こりの原因にもなるとは……。では咬み合わせをケアするには、どういった方法があるのでしょうか?

片側で噛む癖を改善したい場合は、3か月から6か月、噛みづらいと感じる側でガムを噛んでみていただきたいです。頬や舌を噛みやすくなるなど、正直大変だとは思うのですが……数ヶ月で効果が表れることもあります。ガムを噛むだけで手軽ですし、費用もそこまでかからないので、ぜひチャレンジしてみてほしいですね。

咬み合わせの治療は「しっかり噛める状態」をつくることから

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──ガムで咬み合わせの改善をはかれるとは驚きです。では、歯科医院ではどんな治療をおこなうのでしょうか?

歯科医院によってさまざまですね。当院の場合、まずは保険診療の範囲で治療をおこないます。例えば歯が抜けた状態なら、その部分を入れ歯などで補います。そこで「噛む感覚」を実感してもらってから、ご希望があれば見た目を整える審美歯科の治療に移りますね。

──まずは保険診療の範囲で「しっかり噛める」状態まで持っていくのですね。そうやって咬み合わせが整うと、実生活でも何か変化があるのでしょうか?

治療後すぐに変化を実感される患者さんもいらっしゃいますよ。例えばよくあるケースが、歯の詰め物の影響で周囲の天然の歯よりも高くなった状態。この場合、詰め物の部分をほんの少し削って高さを調整するだけで咬み合わせが改善され、顎が楽になる患者さんも多いです。
咬み合わせに違和感がある方は、まず頬杖や横向きに寝るなどの癖がないか見直してみてください。また、舌が下がった状態も避けるべきです。これらの癖を治すだけで咬み合わせが改善され、顎がスムーズに動かせるようになることもあります。
そうやって日頃できる咬み合わせのケアにもトライしつつ、歯科医院も受診してプロのチェック受けていただきたいです。どんな治療で咬み合わせを改善していくべきか、歯科医師と相談して決めていきましょう。

咬み合わせの悪化や普段の癖が気になる場合は一度相談を

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咬み合わせに違和感を覚えつつも、つい放置してしまっている方は多いのではないでしょうか。しかし今回の川村先生のお話で、咬み合わせの悪化が顔の歪みや頭痛などにも影響を及ぼす可能性があるとわかりました。頬杖をついたり横向きに寝たりなど、自分の普段の癖が気になる方はもちろん、現在は顎に違和感はなくても不安がある方は、ぜひ一度歯科医師に相談してみてください。

▼取材協力・記事監修歯科医師
川村歯科医院 川村裕院長
川村歯科医院
1987年に「川村歯科医院」を開設し、2006年11月に杉並区桃井に移転開業。日本補綴歯科学会、口腔関連症候群研究会、全身と咬合の会に所属する。

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