医療法人社団京和会

何らかの事情で歯を失った際に、人工歯根(インプラント)を埋め込んで歯の機能を回復させるインプラント治療。入れ歯やブリッジと異なり周囲の歯に負担をかけることがなく、また噛み心地や見た目に優れていることもあり、近年ではインプラントを選択される方が多くいらっしゃいます。

優れた治療にも思えるインプラントですが、もちろんいつかは寿命がやってきます。扱い方やメインテナンスの有無によっても差はあると思いますが、ネットで検索すると「インプラントの寿命は30年」という情報も出てきます。これは本当でしょうか?

この記事では、都内でKU歯科クリニックを展開する医療法人社団京和会理事長であり、歯学博士、日本口腔インプラント学会専門医でもある梅田和徳先生に、インプラントの寿命について分かりやすく解説していただきました。


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── インプラントの寿命は何年くらいでしょうか? 「30年」という説もありますが…

インプラントの寿命は、皆さん気になりますよね。まず、インプラントとひと言で言っても、あごの骨の中に埋まっている人工歯根の部分のことを言うのか、それとも歯茎から出ている歯の部分を言うのか、もしくは両方のことを言うのかによって寿命の意味合いは変わってくるんです。

まず、インプラントの寿命を長く持たせようと思ったら、「嚙み合わせ」と「メインテナンスなどの日頃のケア」が必須です。これらがしっかりと守られていれば、人工歯根の部分に関して言えば20~30年は持つ可能性があります。ちなみに、私の母もインプラントですがそれくらい持っていますからね。

── インプラントの寿命を長く持たせるには「嚙み合わせ」が大切なんですね

そうなんです。まずはインプラント治療を行う前段階として、「なぜ歯がダメになってしまったのか?」という根本原因をしっかりと見極める必要があります。人の永久歯は通常、上下共に14本ずつの合計28本が生えています。それぞれの歯の嚙み合わせのバランスが崩れていると、一部の歯に過剰な負担がかかってしまい、その結果として歯がダメになってしまうのです。その状態のままインプラントを入れても、また同じ結果になる可能性が高いでしょう。

ですから、私は「一部の歯だけを診るインプラント治療」はせずに「お口全体のバランスを考えたインプラント治療」が大切だと考えます。それが、インプラントの寿命にも大きく関わってきますからね。

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── しっかりとしたインプラント治療をしてくれる歯科医師を見極めるコツはありますか?

ホームページに書いてある場合が多いですが、厚生労働省や日本歯科医学会が認めた学会の専門医や認定医を取得している歯科医師がいいかもしれませんね。専門医や認定医の資格を取得するためには高いハードルがあり、しっかりと定期的に行われる学会に出席したり、新しい知識や情報をアップデートしたり、試験を受けることが求められるからです。ぜひ、参考にしてみてください。

── インプラントは寿命がきたらどうなるのでしょうか?

そうですね。あごの骨の中に埋まっている人工物は、大きく分けて2つの原因で寿命がやってきます。1つは、歯周病のように細菌感染によって支えている骨が痩せていき嚙み合わせの力に耐えられなくなるパターンがあります。そしてもう1つは、インプラント自体にヒビが入ったり割れたりしてしまうパターンです。

その結果どうなるかと言えば、インプラントがグラグラ揺れだしたり、出血や膿が出たりすることがあります。これらの症状が出たら、インプラントに寿命がきたと考えていいでしょう。この状態を放置しておくと、自然とインプラントが脱落してしまう可能性が高いです。

それに、インプラントの箇所に細菌感染が起こると、天然歯よりも早く炎症が進行する特徴があります。それを早期発見・早期治療する意味でも、定期的に歯医者に通ってメインテナンスをすることが欠かせないわけです。

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── インプラントの寿命がきたら、やはり再手術が必要ですか?

再手術が必要ですね。でも再手術を行う前に、感染源を徹底的に取り除いてしっかりと洗浄をする必要があります。そのうえで、症例にもよりますがインプラントを撤去する前に、骨だけを足す方法があります。それができなければ、インプラントを撤去して再度埋入し直します。ただ、これは1回目のインプラント埋入よりもリスクが高いですね。

理由としては、インプラントを支えていた骨がなくなっていることもありますし、一度感染を起こした骨の表面は硬くなることも挙げられます。なかなか再手術が上手くいかないんですよね。それに、天然歯よりもインプラントの方が炎症の進行が早いので、発見が遅くなる傾向があります。そうなると、骨が広範囲にわたってなくなっていることが多いんです。そのため、再手術の難易度も上がってしまいますよね。

繰り返しになりますが、定期的なメインテナンスをしっかりと行いましょう。

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── インプラントの交換費用はいくらくらいでしょうか?

もちろん歯医者さんごとに違いますが、相場でお話すると1回目の手術とほとんど同じくらいだと考えていいと思います。定期的にメインテナンスをしていただき、通常の生活内での破損や脱離などの不具合は、対応年数を考慮したうえで修理や再製することができる歯医者が多いですね。詳しくは、歯科医師に聞いてみてください。

これは参考としてお話しますが、10年・20年前よりもインプラントの費用が高くなっているかもしれません。なぜなら、ほとんどのインプラントは海外から輸入していることあり、原材料価格が高騰しているからです。その分だけ、インプラントの交換費用が高くなる可能性があることは頭の片隅に置いておくといいでしょう。


▼取材協力

梅田和徳先生 プロフィール
医療法人社団 京和会(KU歯科クリニック)理事長
新潟県出身。日本歯科大学卒業後、医療法人社団弘進会勤務を経て、1996年梅田歯科開院。2000年に医療法人社団京和会を設立。2023年現在、銀座・渋谷・新宿・外苑前・三軒茶屋・成城学園・青物横丁に歯科医院を展開。「歯科医療は口腔内全体のバランスを考えること重要。そのためには各専門領域の歯科医師が集結したチーム医療による全体治療を提供する」との考えのもと、KU歯科クリニックでは「歯科総合クリニック」にこだわっている。
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