すずしろ歯科

親知らずが生えると、すぐに抜歯しなければならないと思っていませんか。しかし実はそうでもないようです。今回は練馬区「すずしろ歯科」の山本拓院長に取材を実施。山本先生はこれまで、3,000本以上もの親知らずの埋伏の抜歯(難症例)を経験されています。そんな“親知らず抜歯のプロ”ともいえる山本先生に、親知らずに関してよく挙がる疑問に答えていただきました。


抜歯しない選択肢も…親知らずのあらゆるギモンを解決

「抜歯が怖いから放置」はNG!親知らずをそのままにするリスク

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──すずしろ歯科に来院される患者さんで多い親知らずのトラブルは、どのようなものでしょうか。

歯ぐきの腫れ・横向きに生える・埋まっていて一部だけ出てきた……といった症状ですね。年齢的には若い方が中心です。性別問わず、10代後半~30代くらいの方が多くいらっしゃいます。

──親知らずが気になりつつもなかなか来院できない理由に、「抜歯が痛そうで怖い」「大きな病院は慣れなくて不安」というものがあるようです。こういった理由で親知らずを放置するリスクにはどのようなものがありますか?

親知らずは必ずしも抜かなければならないわけではありません。お口の状態は患者さんによって異なりますし、放置しても腫れたり噛み合わせに悪影響を及ぼしたりしないケースもあるからです。
ただ、放置することで患部が炎症を起こしたり、虫歯になって口腔内環境全体が悪くなったりするリスクはあります。

──では、抜歯すべき親知らずを放置してしまった場合、放置の期間が長ければ長いほど抜歯が難しくなることはあるのでしょうか。

放置期間よりも年齢に関わる部分が大きいです。加齢とともに骨の質が変化し、若い頃よりも硬く脆くなってしまうからです。また、抜歯後のことを考えても年齢が若いほうがよいでしょう。抜歯後に腫れやすいのは若い女性ですが、治りが早い傾向があるのも若い女性。このようなことを考えると、やはり親知らずは若いうちに抜歯してしまったほうがよいといえます。

炎症はまず抑える。すぐに抜歯しない親知らずのケースとは

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──親知らずが原因の「智歯周囲炎」というものがあると聞きました。具体的にどのような症状ですか?

「智歯」は親知らずのことで、「智歯周囲炎」は親知らずの影響で歯肉や歯周組織に炎症が起きた状態です。これが起こる原因としては、親知らずの生え方や磨き残しなどがあります。親知らずはまっすぐ生えることは少なく、半分歯ぐきに埋まった状態になっていることも多い。そうなるとその歯ぐき周辺に細菌がいる可能性もあります。それが原因で免疫力が下がり、炎症が起こりやすくなるのです。

──親知らずが原因で炎症が起きている場合は、「まず抜歯」ということになるのでしょうか。

炎症を抑えることが先決です。抗生物質を使用したり、細菌を減らすために周囲を清掃したりします。炎症が治まれば、そのまま様子を見るケースもありますし、抜歯するケースも。ですから炎症が起きている場合でも、必ずしも「抜歯」となるわけではありません。
また、親知らずを抜かずに温存し、他の歯が抜けてしまった際に抜歯して移植する方法(自家歯牙移植)もあります。失った歯を自分の歯で補うことになりますので、インプラント治療の一歩手前の選択肢といえるでしょう。ただ、移植については年齢的なリミットもあります。

──親知らずを移植する方法があるとは知りませんでした……。親知らずの周りが炎症を起こしている場合、すぐに抜歯できないのはなぜですか?

炎症は親知らずの抜歯において“天敵”といえるからです。その理由としては、麻酔が効きにくい・痛みが発生しやすい・抜歯後の腫れが強く出やすい、などがあります。つまり炎症があるまま親知らずの抜歯をしても、よいことはありません。炎症を抑えることで抜歯後に腫れるリスクを抑えられますし、治りも早められます。

時間はかかる?上手な先生の条件は?親知らずの抜歯でよくあるギモン

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──一般的に、親知らずの抜歯にかかる時間はどのくらいでしょうか。

親知らずの生え方や患者さんのお口の状態によって異なります。上顎から真っ直ぐ生えている親知らずなら、5分くらいで抜けることも。一方で下顎から横向きに埋まった状態で生えている場合、長くて1時間かかることもあります。

──親知らずの抜歯は先生の腕次第なイメージもあります。実際のところはどうなのでしょうか。高度な技術や知識は必要ですか?

知識や技術は個人差があるでしょうが、ある程度数をこなして抜歯に慣れた先生なら、スムーズに抜歯できると思います。

──「このようにすればきれいに抜ける」といった方法はあるのですか?

基本的には、痛み・腫れを最小限に抑えられるように抜くのがポイントです。そのためには術後状態を踏まえた切開線にしなければなりません。最終的な咬合を考え、患者さんの口腔内環境も診つつ、慎重に判断していきます。
術後状態がうまくイメージできていないと、縫合してから不具合が起きる可能性もあります。例えば「ブラッシングが上手くできない」などです。とにかく抜くことだけに集中すると腫れが酷くなるケースも。私は大学病院時代に経験したことを活かして研究した結果、今の方法にたどり着きました。

──親知らずの抜歯後に患部が腫れる原因は何でしょうか?

切開線が大きすぎる・周囲の骨を削りすぎる、といったことが考えられますが、一概には言えませんね。ただ、一般的に女性のほうが腫れやすいです。また、痛みに関しては男性のほうが感じやすい傾向があるようです。

抜歯が怖くても放置はしないで。親知らずの悩みはまず相談を

──親知らずは難症例の場合、大学病院をすすめられることもあると聞きます。こういったケースは具体的にどのような状態でしょうか。

総合的に判断して、ハイリスクと考えられる場合は大学病院を紹介します。特に下の親知らずは骨の神経に近いため、そう判断することが多いです。あとは患者さんの全身疾患の有無や親知らずの生え方、口腔内の環境も判断材料に入りますね。
あるいは、初めから患者さんご自身が大学病院での抜歯をと希望されるケースも。その際は当院、大学病院で抜くメリット・デメリットをそれぞれきちんと説明したうえで選んでもらっています。

──そのように事前にメリット・デメリットを知られるのは安心感につながりますね。山本先生のように知識・経験が豊富であれば、難症例でも院内で対応されるのでしょうか。

自信はありますが、過信はしていません。常に謙虚な気持ちで治療にあたっています。

──口腔外科出身の山本先生の視点から、親知らずで悩んでいる患者さんへアドバイスをお願いします。

親知らずが気になる場合は、一度掛かりつけの先生に相談してみてください。親知らずがあるからといってすぐに抜歯になるわけではありません。今の状況をレントゲンを撮って判断してもらい、自分に合った治療方針を教えてもらいましょう。

▼取材協力・記事監修歯科医師
すずしろ歯科 山本拓院長
すずしろ歯科
2009年11月に「すずしろ歯科」を開院。日本口腔外科学会、IPOI学会に所属し、歯科ドック学会 認定医の資格を持つ。日本大学松戸歯学部の非常勤講師も務める。

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